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2012年3月2日金曜日

日本vsウズベキスタン戦レビュー

今回の当コラムでは2月29日に愛知県の豊田スタジアムで行われたFIFAワールドカップブラジル大会アジア3次予選日本vsウズベキスタンを振り返っていきたいと思う。

まず、日本代表のスタメンに触れておきたい。
今回のウズベキスタン戦では、スタメン11人の内、実に8人が海外でプレーする選手となった。1998年のフランスW杯から日本代表を見ている筆者にとって、スタメンに海外組がこれだけ名を連ねる日が来たということは感慨深いものがある。注目された前線の組み合わせは、長身FWのハーフナーを1トップに置き、アイスランド戦でゴールを決めた藤本を右に、絶好調の岡崎を左で起用。怪我から復帰した香川に所属するドルトムントでも主戦場とするトップ下を任せる布陣となった。また、代表デビューが期待される宮市はベンチからのスタートとなった。
・緊迫した前半
タシケントで行われた前回のウズベキスタン戦(1-1のドロー)では、前半8分に先制を許したことで、苦戦を強いられた。今回も同じ轍を踏む訳にはいかない日本代表は慎重な立ち上がりを見せたが、立ち上がりはウズベキスタンがリズムを掴んだ。ウズベキスタンの選手たちが最終ラインからしっかりとパスをつないできたことで、日本代表はなかなか自分たちのペースで試合を進めることができず、我慢する時間帯が続いた。(前半15分までのボール支配率は日本が44パーセント、ウズベキスタンが56パーセント)その結果、内田と長友の両サイドバックが高い位置で仕掛けたり、クロスをあげるといったプレーは全く見られなかった。しかし、この苦しい状況の中で、香川が流石のプレーを披露する。相手陣内にスペースがなかなか無い中で、しっかりとボールを収め、攻撃のリズムを作り出す背番号10からのスルーパスからチャンスが生まれたのは前半22分。パスを受けた岡崎が相手DFを交わしてシュートを放ったが、惜しくもバーに阻まれた。しかし、このプレーから日本代表はリズムを掴み始める。内田、長友の両サイドバックがオーバラップからチャンスを演出するシーンが増え、ゴールの匂いを感じさせたものの、決定的なチャンスが余り無いまま前半が終了した。
・苦しんだ後半
なかなかリズムを掴めなかった前半の反省を活かしたい日本代表は、後半開始早々から積極的なプレスを見せる。なんとしてでも先制点をとって試合をコントロールしたいところだったが、欲しかった先制点はウズベキスタンに転がり込んだ。後半9分にカウンターから左サイドを崩され、最後はシャドリンがゴールに押し込む。センターバックの吉田が、
「練習中から(サイドバックの)片方が上がって片方が絞るっていうのは、昨日から言われてたんで、そこを徹底しようという話でしたけど、失点の場面ではできなかったのがね。ボランチもしっかり戻せてなかったのが、失点につながってしまったんで。センターバックはもちろん(味方の守備を)コントロールしないといけないし、1人ひとりがやらないといけないと思います」
と振り返った痛恨の失点で、前回同様苦しい戦いを強いられることとなった。
早い時間帯に1点を返したいザッケローニ監督は、後半14分に藤本に換えて乾、後半20分にはハーフナーに換えて李を投入し、攻撃の活性化を図る。乾は持ち前のドリブル突破でチャンスを演出しようと試みるものの、なかなか決定的なチャンスを作り出すことができない。すると、コンディションの影響からか、日本題表の選手たちの足が止まり始めたことでカウンターから決定的なピンチを招くシーンが何度も繰り返される。幸いなことにウズベキスタンの選手たちが決定機をモノに出来なかったとはいえ、カウンターから失点を喫した可能性は十分にあった。結局、チャンスらしいチャンスを作ることができず、タイムアップの笛が無情にも鳴り響く。スコアこそ0-1だったが、内容的には完敗といっても過言ではない試合であった。
・両チームの感想
日本代表としては、前半の立ち上がりにリズムを掴めなかったことがとても悔やまれる一戦となってしまった。ウズベキスタンの選手たちのプレーが素晴らしかったとはいえ、アジア王者としての貫録を見せつけることが全くできなかったことは残念でならない。また、個人的に気になったのはハーフナーと李の起用方法についてである。日本代表がなかなか自分たちのペースで試合を進められなかった一因にハーフナーが攻撃の起点になれなかったことが挙げられる。個人的には前半のように足元でしっかりとつなぐサッカーを志向する場合、高さがあるハーフナーよりも、より周りと連動することのできる万能型の李の方が戦術にマッチしていると思う。そして、1点を追いかけ、パワープレーが必要になる後半のような試合展開の時こそ「高さ」という絶対的な武器のあるハーフナーが活きるのではないだろうか。
一方、完璧な試合運びを見せたウズベキスタンは称賛すべき点が多々あった。しっかりと4-4のブロックを作り、全体をコンパクトに保つことで、日本代表にスペースを与えなかった守備はとても手強いものであった。また、連動したプレスや出足の早いチェックは90分間衰えることがなかった。そして、攻撃面ではしっかりと最終ラインからパスをつなぎ、自分たちのペースを作ることに成功。相手の足が止まり始めた終盤戦では素早いカウンターから決定機を連発した。そして、カウンターの場面ではしっかりとフィニッシュまで持ち込むことで、日本代表のカウンターを封じるなど、試合巧者ぶりも目立った。日本代表としては、最終予選を前にこのような相手と真剣勝負ができたことはラッキーだったと言える。
この敗戦によって3次予選をグループ2位で通過することになった日本代表。6月から始まる最終予選を前にして、多くの課題が見つかる試合となってしまった。しかし、選手たちからは、
「これからまた、こういうきつい日程の中で試合をやんなきゃいけないんで、どれだけチームの連係だったり、連動だったりをうまくできるかっていうところが今後重要になってくると思います。ただ、勝負の世界はこういうこともあるんで、全くネガティブに考える必要はないし、この負けから何を学んでどう成長していくかが大事なんで。僕自身は全くネガティブに感じてないです」(長友)
「最終予選への影響は何もないと思います。まだ時間もあるし、自信を持っていきたいです。自信がなくなるのが一番ダメだから。ザックさんは怒ってると思いますけどね」(遠藤)
「負けて言うのも何なんですが、実際に悪い場面ばかりじゃなかったし、自分たちの中でやっていて、最後のところはまだもうちょっと、というのがあったけど、それまでの組み立ての部分は良かったところもあると思います。みんなが同じ意識を持ってやってるなとも感じたし、その中でもたくさんの問題点が見つかったかなと。ポジティブ、ネガティブな部分両方が出ましたよね。結果だけ見るとネガティブになってしまうかもしれないけど、そういうところばかり見ずに、少しでも前向きにやっていくのは大事なんじゃないかと思います」(長谷部)
と前向きなコメントが相次いだ。筆者自身、今まで積み重ねてきたベースはこの敗戦だけで揺らいではいけないと思う。前述したように、最終予選前にこういった相手と試合ができたことをプラスに捉えるしかない。最終予選では、これまで以上の難しい試合が続く。選手たちにはこの敗戦を糧にして、最終予選で同じ過ちを繰り返さないことを期待したい。

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