持っているかのようだった。
インテルが3冠を達成した際の英雄の一人である。
ジョゼ・モウリーニョの率いるチームで最大限に力を発揮していた彼をインテルから引き抜こうと、
ヨーロッパ中のチームが何度も画策したものだった。
だがやはり、サッカーとは絶えず変化し続けるスポーツである。今日の王者が明日には問題の種と
なってしまうこともある…。
チームにとって、決して必要不可欠ではない選手とはどういうものか。
今季のスナイデルは、それを身をもって体験している。
ラニエリのインテルは、かつてモウリーニョがつくり上げたものとは明らかに異なる。
元チェルシー、ローマ、ユヴェントス監督のラニエリが愛するのは、クラシックな4-4-2の
フォーメーション。スナイデルのようなトップ下の選手の存在を前提としない戦術スタイルである。
レッチェに敗れた試合では、ラニエリはこのチームの本質を変えようとしてしまった。
中盤をダイヤモンド型とし、2トップのディエゴ・ミリートとジャンパオロ・パッツィーニの後ろに
スナイデルを配置したのだ。
果たしてその結果は? インテルは間延びし、締まりがなく、意外性を欠くチームとなってしまった。
結局45分が過ぎた時点で、ラニエリはほかならぬスナイデルをベンチに下げ、
システムをよりチームに適した4-4-2に戻すことを決意した。
スナイデルには完全に失格の烙印が押された形である。試合後のラニエリの説明でもそれは明らかだった。
[2/3]
「スナイデルの交代? 彼のプレーが悪かったわけではないが、チームに安定感を取り戻させたかった。
4-3-1-2はまだうまく機能させられていない。
4-4-2の方がより力を発揮することができる。
彼はトップ下でしかプレーできないのかって? 以前にも何度も言ったように、彼はセンターの選手だ。
自由に動けるようにさせてやらなければならない。トップ下の選手であり、サイドに押し込めることは
できない。4-4-1-1でもプレーできるが、ダイヤモンドでもうまく機能させられるように
しなければならない。今日はそれを試したが、まだチームがうまく落ち着かない様子だった。
プレスをかけられず、チームが間延びしてしまっていたので変えることにした。
離脱していた選手をチームに戻すのは簡単ではない。スナイデルとトップ1人を置く形であれ、
ダイヤモンド型であれ、今の時点ではまだうまく機能させることができない」
ラニエリの戦術的ジレンマをあらためて感じさせる重い言葉である。
より確実な戦術を取るか、スナイデルの創造性を無駄にしないために自らの信念を転換させるかの
選択を強いられている。
さて、どうするべきだろうか? おそらくその正解を思いつくのは難しいことではないだろう。
個人的には、スナイデルの旅はもはや終着駅を迎えたと考えている。
インテルはどうやらこのままラニエリにチームを任せていくことを決めたようだ。
だとすれば、スナイデルのような選手をチームに置いておくことは得策ではない。
ラニエリはスナイデルのようなトップ下を必要としていない。
ならば彼を放出し、ラニエリの4-4-2により適した選手を獲得するための資金を手に入れた方が
いいだろう。
[3/3]
オファーに事欠くことはない。
イングランドには彼の獲得に大金を投じてもいいというチームもあるし、買い手に困ることは
ないだろう。この冬の移籍市場の締め切り直前に、大型取引を成立させる時間もないわけでは
なさそうだ。
1つの案を出してみるとしよう。
インテルがテベスを獲得するための条件として、スナイデルの譲渡を提案したとすれば
シティはどう回答してくるだろうか? あるいはレオナルドなら、スナイデルの移籍を提案されれば
どうするだろうか?
思い出だけを糧に生きていくことはできない。
スナイデルは(ムラっ気のある性格から、時にピッチ上で集中力を失ってしまうこともあるとはいえ)
偉大な選手ではあるが、彼がインテルで過ごす時間はもはや終わろうとしている。
ラニエリはすでに見切りをつけた。あとはモラッティがどうするかだ。
美しいサッカーを愛するインテルのパトロンは、彼の大事な秘蔵っ子たちをそう簡単に手放そうとは
しない。だが、二度と戻ることのない過去の思い出の中で生きていくことはできないのだから…。
文/ファブリツィオ・ポンチローリ
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